■ フライトジャケットとは ■  

 アメリカ軍におけるフライトジャケットの発達は、1917年に陸軍が航空衣料評議委員会が設立されたことから始まる。 一番最初に開発された、フライトスーツのB1に始まって、現在のCWU45/Pまで、フライトジャケットは進化してきた。 その進化の過程にはさまざまな話があり、話せば長い話になるので、ここで最もフライトジャケットの開発が盛んだった 第2次世界大戦の戦闘機搭乗員の話をしよう。

 第2次世界大戦当時、連合軍はドイツへの戦略爆撃を行った。
 この戦略爆撃とは、ドイツ軍の基地や兵力を直接攻撃目標とするのではなく、軍事、産業工場や施設を攻撃し、 ドイツの工業、経済力の基幹産業そのものを破壊させて、軍事的な抵抗力を奮おうととするものだ。 このため、ボールベアリングなどのすべての機械に使用され、供給できなければ多方面に渡って影響を受けるような 部品の生産工場に対しての攻撃が優先された。

 ところがこうした工場は、ドイツ本土の奥深くヨーロッパ各地に点在していた。これらの 目標に対して攻撃を行う連合軍は、まだヨーロッパ大陸には進出してはおらず、イギリスやアフリカから長距離爆撃を行うほかに術がなかった。 時は1943年から1944年初頭のことである。イギリス本土からドイツ本土へ往復距離は1000km以上にもなり、これだけ長距離を飛行できる戦闘機は、 まだ登場していなかった。(P-51が出現する)
 爆撃機は護衛機なしで爆撃を行わなければならなかった。しかも、ドイツ軍の防空網は強力で、高射砲の弾幕や防空戦闘機の迎撃は執拗だった。 しかもアメリカ軍は反撃をうけやすい昼間、爆撃効果が高いという理由で決行したのである。

 その結果、被害は大きかった。爆撃搭乗員達は30kgにもなる装備を身につけ、5時間〜6時間にも渡る緊張を強いられる任務に就いたのだった。

 敵の攻撃を避けつつ、しかもできる限り速やかに目標地点に到達するためには、高々度で大編隊を組んで飛行するほかはない。 搭載する爆弾や兵装(自衛用の火器や弾薬)、燃料は制限がある。しかも爆弾や兵装を優先して搭載すれば、積める燃料は減り、長時間の飛行はできない。 またその比率を逆にすれば、爆撃効果が上がらず、両者の妥協点をとって比率が決定されるため、できる限り速い速度で効率よく飛べる高々度を飛行するのである。 またドイツ軍の迎撃機に対抗するために、くさび型体系になる「戦闘箱」とも呼ばれる密集防衛隊を組んで飛行した。

 高度を飛行すると厳しい寒さにおそわれる。その温度は零下何十度にもなり、身を切るように冷たい。しかも高度6,000m以上にもなると、酸素マスクが必要となる。

 またドイツ軍の高射砲弾による破片も危険で、いつ直撃するかわからなかった。搭乗員はこうした危険から身を守るために、B-3やB-6などの厚手のかさばるレザージャケットに 銅板で作られた防弾チョッキを着用したのだった。さらに頭部を保護するために、ミッキーマウスと呼ばれたM-3ヘルメット、ブーツも極厚のものを身につけた。 彼らは一度身につけると動くのも大変な重装備で搭乗し、長時間の間厳しい寒さに耐え、いつ現れるかわからない戦闘機に怯え、緊張しつつそれぞれの任務をこなすのだった。

 だが彼らのこうした忍耐をもってしても損害は大きく、1943年の8月から9月にかけての期間には、1回の出撃で230機中60機が撃墜され、100機が負傷し、700名近い搭乗員が失われた (戦死、負傷、行方不明、捕虜などを含めてという記録がある)。このような損害は、1944年に入り、P51が護衛に入るまで続いたのだった。

 フライトジャケットは、こうした苛酷な任務に就いた男たちの命を守ったジャケットであり、それだからこそ今日まで絶大な人気を保っているのだろう。



  ■ これだけは知っておきたい用語 ■  

 フライトジャケットの特徴をデザイン用語を使って説明してみると、アビエタージャケットは首部分に風が入り込まないようにしっかりしたカラーを持ち、ジップフロントタイプ。 袖口や襟は風が入り込まず、しかも体にフィットして動きをさまたげることがないように「リブフィットを採用したジャケット」ということになる。

 カラーは襟のこと。シャツのレギュラー・カラーに近いA-2タイプや、ボアを張ったG-1やB-3、ラウンド・カラーともいえるCWU45/P,CWU36/Pなどさまざまだ。

 ジップフロントとは、前開きをジッパー留めしたフロントデザインのこと。

 リブは袖口や襟の使用されているジャージーのことで、ニットや難燃性の繊維を使用しているなどの違いはあっても、フライトジャケットの大半はリブを使用する。

 またフライトジャケットにはフラップポケットを使用したものが多い。フラップポケットとは雨ぶた付きポケット。さらにポケットは外側から貼り付けたパッチポケットが付いているものが多く、 正確にはパッチ・アンド・フラップポケットということになる。

 ジャケットの裏地のことはライナーという。フライトジャケットでは、単なる布のライナーから、ボア付き、キルト止めのものまでさまざまだ。

 フライトジャケットの特徴を表わすもののひとつとして、ラベルが上げられる。これはジャケットの襟首部に縫い付けられた1枚の小方の布であるが、 これによってジャケットがどれだけ軍で使用されているものに近いものであるか、あるいはカジュアルに近いものであるかなどの判別ができる。 つまりメーカーブランドがわかるということ。たとえば、ラベルがアビレックスだとしたら、このメーカーは米軍のフライトジャケットを生産するアメリカ最大のメーカーであり、 そのジャケットは軍でも使用する本物だということになる。一方、カジュアルウェアとしての雄ならばショットやシェビオンだ。

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